遊び雲

西宮市の障害者支援のNPO法人「遊び雲」は居宅介護、家事援助、身体介護、外出支援などを通して、障害者がイキイキと暮らせる社会をめざして活動しています。
  

「KSKP 遊び雲 通信~『こんちくしょう』」より

遊び雲から毎月発行している会報「KSKP 遊び雲 通信~『こんちくしょう』」からピックアップした記事をこちらで一部公開します。

  

虐待案件の報告

私たちが提供する重度訪問介護事業の中で虐待が発生してしまいました。以下経過と対応についてご報告いたします。

【発生した虐待の内容】

・発生日   2019年5月6日 午後8時30分頃

・利用者   Aさん(男性)

・発生場所  利用者自宅

・報告日   2019年5月9日夜  行為を目撃したヘルパーから

・内容    ヘルパー2人体制による入浴介護時に発生。ヘルパーBが、着替えの介護の際に利用者がしゃべられないように、口にテープを2回貼った。Aさんはご自身でテープをすぐはがされた。

【経過・対応】

5月  6日 虐待事案発生
9日 目撃したヘルパーより上記内容の報告を受ける
   10日 ・西宮市へ報告(虐待防止責任者と管理者で報告必要ありと判断)

・緊急サービス提供会議(男性)を開催して、ヘルパーBの業務の全面停止を決定

・担当コーディネーターが利用者の通所施設を訪問

・ヘルパーBへ事実確認

~冒頭にテープを貼った事実を認め、「おわびします」。

「着替えや食事の際に、ずっと話しかけられると集中できず危ないので、しゃべらないで下さいとお願いしたが、聞いてもらえなかった」「至らないところはあるかもしれないが、威圧的な言動は改めているつもり」「かなり以前は泊りの回数も多くストレスになるので減らすようにお願いした」など述べた。

テープを貼った理由を問うと、「本気で貼ったのではない」「冗談半分だった」

・事実確認後、同日内にヘルパーBから退職の申し出を受ける。

   14日 ・利用者の保護者に報告謝罪  ・目撃したヘルパーへの再度の聞き取り

・Aさんに関わるヘルパー全員に面談し、不適切な支援について聞き取り開始。

   15日 ・西宮市へ書面提出

・遊び雲第三者委員へ報告

・ヘルパーBと再度面談

~他ヘルパーから聞き取った今回の件以外の不適切な行為に関する事実確認を行った結果、威圧的な言動等について概ね事実だと認める。

「頻度が多く、職員や事業所の事を思うと断れずに、自分の感情をおさえきれなかった。知的障害について、自分の中で消化できておらず、担当する事自体にイライラしてしまった」

退職の意思確認及び退職後も必要な調査等に協力する旨の誓約書を提出。

   16日 理事、監事ならびに相談支援事業者に報告
   26日 利用者ご本人に事実確認と謝罪
   30日 理事会/総会 (報告)
6月 11日 西宮市(法人指導課・生活支援課)よる第1回目の法人への聞き取り

発生原因と再発防止策の提出を求められる

   28日 西宮市へ「発生原因と再発防止策」を提出

発生原因として以下の内容を上げ、再発防止策をまとめ提出した。

①    ヘルパーBが知的障害のあるAさんへの支援の基本的な理解がなかったこと

②    理解していないBに多くの業務を委ねてしまったこと

③    過去、不適切ではないかとの他ヘルパーからの報告に対して、聞いた職員が対応しなかったこと

④    不適切対応と疑われる事案に対する事業所内の仕組みが極めて不十分であった事

8月  2日 緊急第三者委員会開催                                  詳細な防止策検討のため、プロジェクトチーム立ち上げの提案を受ける。
    5日 職員会議・虐待防止策発案プロジェクトチームを立ち上げる(以下Pチーム)。
9月 11日 西宮市法人指導課による第2回目の法人ならびに関係職員・ヘルパーへの聞き取り

市の見解:「西宮市として当該行為だけでなく、ヘルパーBによる一連の行為は虐待だと認識。兵庫県にも報告」

「Bによる不適切な行為、それに対する事業所の取組」「知的障害に関する研修内容」「利用者Aさんの支援計画」等の追加資料の提出を求められる。

   26日 緊急理事会:本件とその後の取組等の報告と職員への処分について検討

Pチームによる全職員への聞き取りを開始

10月 18日 全利用者に書面にて虐待問題の報告
25日 登録ヘルパーへの説明報告会
   28日 第三者委員会:再発防止策等の検討
11月 14日 西宮市法人指導課の3回目の聞き取り
   27日 虐待に関する全職員からの聞き取りをT理事に報告
12月 5日 理事会にてその後の取組報告と処分に関する検討
   6日 西宮市法人指導課から最終指導

行政処分はなし。これまでの聞き取りの中で法人指導課としての意見指導、資料提出等をもって指導とする。

・5月10日に通報のあった内容の事実確認を「西宮市権利擁護センター」「西宮市総合相談支援センター」「生活支援課」「法人指導課」、西宮市虐待対応に定められている、この4つの機関により事実確認及び認定を行った。

・6月17日付で今回の案件について、障害者に対する身体的、心理的虐待と認定。

・その後の事業所へのヒアリングにより改善状況を聞き、当該ヘルパーがすでに退職している事、また利用者の状況を確認したところ、虐待状況は解消されていると判断した。

・今回の案件について行政処分を行うかどうかの争点として…

ヘルパーBの始業から今回の件に至るまで、利用者や他職員からの報告・相談があり、その中には虐待に発展する要素が含まれていた。その都度、何らかの指導はしていたものの、人材不足の情勢の中で指導の強弱に苦慮していた面もあった。措置を怠っていたとまでは言えないが、結果として今回の虐待案件に至った。事業所全体の組織性による過失とは認めないが、結果論でなく管理体制、従業者の教育について今後とも真摯に改善して欲しい。

・今回を踏まえ来年度に実地指導を行う。

2月  27日 虐待に関する介護者全体研修を開催
3月  19日 マニュアルを用いた職員研修
     25日 全登録ヘルパーにマニュアル簡易版と報告書を送付
26日 理事会の開催:虐待に関する職員への処分を決定。処分内容は下記。

事業所長:譴責   虐待防止責任者:3ヶ月の減給

   27日 西宮市法人指導課に「虐待防止マニュアル」を提出
4月 28日 全利用者にマニュアル簡易版と報告書を送付

 

報告が大変遅くなったことをお詫び申し上げます。今回の件では、関係者の方々に、多大なご迷惑、ご心配をおかけいたしました。恐怖や不安を感じさせてしまった障害当事者の皆様からも厳しいご意見をいただきました。今後繰り返すことがないように、職員一同、虐待防止マニュアルに基づいて研修・面談などを充実し、なによりも風通しの良い事業所づくりに取り組んでいきたいと思います。